懐かしい声は、男を捨てた妻の声でした。
妻は誰かと話をしているようです。
妻「計画通りね。」
●「あぁ。この男は知らなかったんだろうな。
今まで、このゲームに勝った客はいないということを。」
妻「そうね。」
●「スタッフに毒入りグラスの場所を教えるように言っておいたのが効いたな。
そうでなきゃ、こんな馬鹿げた賭けをする奴なんているわけがない。
....ところで、報酬はきちんと払ってくれるんだろうな?」
妻「ええ、もちろん。これで彼の遺産が私に入るもの。」
●「おいおい、この男の遺産だって?この男は明日の飯も食えないほどの
貧乏な男なんだぞ!?」
妻「実はね。彼って、ある資産家の隠し子なのよ。しかも一人息子。
彼は知らなかったみたいだけどね。この前、その資産家が死んで、
すべての遺産を彼が相続する事になったの。
彼と別れる前に調査会社の人間が来てそんなことを言ってたわ。」
●「ちょっと待て。だったら、その遺産ってのは、この男のものだろ?
お前のものじゃないだろうが。」
妻「バカねぇ。私はこの男の妻なのよ。
旦那が死んだら、その遺産は妻のものなの。常識でしょ?」
●「もう別れたんだろ?」
妻「そうよ。でも籍は入っているわ。
そのために離婚届は出していないんだから.....。」
賭けに負けた男は、薄れ行く意識の中で妻の声を聞きながら、
自らの命が消えゆくのを待つしかなかった.....。